アメリカといえば短い産後休暇でも有名ですよね。私の周りの友人でも、仕事からもらえる産後休暇が6週間しかなく、もっと子供と過ごしたい、体も回復しきっていない中でも仕事に復帰せざるを得ないことになった人を何人も知っています。
今回紹介するのは、2020年に可決されてから2024年1月1日にスタートした、コロラド州の提供する有給休暇プログラム。
このプログラムを使うことで、なんと産後母親だけではなく父親も、州が収入のやく80%をサポートした中で約3ヶ月間の休暇を取ることが可能になります!
FAMILIとは
Family and Medical Leave Insurance、通称FAMILIというこのプログラムは、2020年に承認された家族のための医療休暇保険制度です。
この制度は、生活上の重要な出来事で仕事を休む必要がある際に、収入か家族の世話かの二者択一を迫られることなく、有給休暇を取得できるようにするものです。
2024年1月1日より、FAMLI制度の給付が正式に開始されました。対象となるコロラド州の労働者は、年間最大12週間の休暇を以下の目的で取得できます:
- 養子縁組や里親を含む、新しい子どもとの絆を深めるため
- 本人が重篤な健康上の問題を抱えた場合の療養のため
- 家族の重篤な健康上の問題の看護のため
- 家族の軍事派遣に関する諸手続きのため
- ドメスティックバイオレンスや性的暴力による緊急の安全確保や対応のため
妊娠や出産に合併症が生じた場合は、さらに4週間追加され、年間最大16週間の休暇を取得できます。
この制度の保険料は、雇用主と従業員の双方が負担し、2023年1月から徴収が開始されました。FAMLIの保険料・給付計算機を使用すると、あなたの保険料と受け取れる可能性のある給付金額を試算することができます。
どんな理由でプログラムを利用できるか
このプログラムはどんな理由で利用することができるのでしょうか?それぞれ申請時に必要な書類も異なってくるので、どんな理由でどんな書類の提出が必要になるのかをみていきましょう。
1、Parental (Bonding) Leaveー出産後のサポートのため
子供が生まれた後の休暇、そして子供との時間を取ることを目的に休暇を取得することができます。こちらは母親だけではなく父親も取得することができます。また、養子縁組をして子供を受け入れた場合でもこの理由でFAMILIプログラムを利用することが可能です。
万が一妊娠や出産に合併症が生じた場合、給付期間が最大16週間まで延長される可能性があります。その場合、妊娠や出産の合併症に関連する重篤な健康状態であることを、免許を持つ医療提供者による証明が必要です。
申請の際に求められる書類
親子の絆を深めるため、もしくは産後の回復と回復する家族をサポートするためにFAMILIを利用する場合、以下の書類の提出が求められます。
- 出生証明書
- 医療提供者または医療施設からの出生または回復期のケアに関する書類
→出生を証明する書類には必ずお子さんの生年月日が記載されていることを確認しましょう! - 養子縁組または里親委託に関する書類
→FAMLIの休暇申請理由に関わらず、部門は申請処理に必要な合理的な追加情報や書類(My FAMLI+で要求される以外のもの)を求める場合があります
出産予定の親は、予定される休暇開始日の30日前から育児(養育)休暇の申請を開始することができます。ただし、申請を完了するには出生を証明する書類が必要です。その書類が提出されるまでは、申請は下書きとして保存されます。
新しい親は、出生、養子縁組、または里親委託から最初の12ヶ月以内であれば、いつでもFAMLI休暇を取得して新しい子どもとの絆を深めることができます。そのため、2023年に新しい子どもを迎えた親は、子どもが来た時に雇用主提供の休暇や無給のFMLA休暇を使用していたとしても、2024年(給付開始時)にも一定期間の受給資格を持つ可能性があります。
2、Medical Leave to care for Yourselfー自身の病気怪我からの回復のため
2つ目の理由は、自身の病気怪我からの療養のためです。病院、ホスピスでのケア、居住型医療施設での入院治療、もしくは医療提供者による継続的な治療を必要とする以下のような状態の場合、FAMILIを使って有給休暇を申請できます。
- 病気
- 仕事に関連しない怪我
- 手術
- 機能障害
- 妊娠または出産からの回復
申請の際に求められる書類
自身の健康状態、療養の理由でFAMILIを申請する際、以下の書類が求められます。
- 重篤な健康状態証明書
医療休暇を申請する際には、免許を持つ医療提供者が療養が必要であることが記載された健康状態証明書に記入し、署名する必要があります。
3、Medical Leave to care for Family Memberー家族の病気怪我からの回復サポートのため
FAMILIは自身の療養のためだけではなく、家族など大切な人の看病のためにも取得することができます。
家族関係を判断する際には、以下のような要素が考慮されます。
- 共同の賃貸契約、共同所有の財産、共同の請求書支払い責任、または受益者指定など、共有する経済的責任
- 緊急連絡先としての指定
- その関係や過去の介護arrangements(取り決め)によって生まれたケアへの期待
- 同居の有無とパートナーシップの期間
- 地理的な近さ
申請の際に求められる書類
家族の健康とその療養のサポートの理由でFAMILIを申請する際、以下の書類が求められます。
- 健康状態証明書
家族の看護のための医療休暇を申請する際には、家族の治療を行っている免許を持つ医療提供者の詳細を提供する必要があります。その医療提供者は、家族に代わって療養が必要であることを示す健康状態証明書に記入し、署名する必要があります。
4、Military Family Member (Exigency) Leaveー家族の軍事派遣に関する諸手続きのため
FAMILIプログラムは軍事派遣される軍人の家族をサポートするためにも利用することができます。
軍人家族(緊急)休暇は、家族メンバーの現役勤務または現役勤務への召集命令(または予告)に起因するニーズに基づいています。これには以下のようなケースが含まれますが、これらに限定されません
- 軍人の子どもや他の家族メンバーのケアやその他のニーズへの対応
- 軍人のための財務的または法的な手続きの実施
- カウンセリング、軍事イベントや式典への参加
- 配備後の休養期間中における軍人との時間の共有
申請の際に求められる書類
こちらの理由でFAMILIを申請する際、以下の書類が求められます。
- 軍人の現役勤務を証明する書類
5、Safe Leave (Domestic Violence)ー家庭内暴力などから逃げるため
FAMILIプログラムでは今まで上げてきたような健康上の理由や療養、それをサポートするためだけではなく、従業員や家族がドメスティックバイオレンス、ストーカー行為、虐待、性的暴力、またはその他の状況を経験した場合に、必要な対応を取るための雇用保護付き休暇を提供します。
多くの性的被害、性的暴力は誰にも報告も通報もせずに被害者が泣き寝入りになってしまうケースが多いです。この理由でFAMILIを申請された場合、プログラムを利用した休暇の資格を判断する際、ドメスティックバイオレンス、ストーカー行為、性的暴力、または虐待の被害者であることを証明するために、裁判所による判決は必要ありません。また、給付を受けるには、申請者が誠実に、自身がドメスティックバイオレンス、ストーカー行為、性的暴力、または虐待の被害者であることを法的に宣誓する必要があります。
このプログラムを受けるために必要なことは?
このプログラムを受けるためには以下の条件が必要です。
- コロラド州の労働者であること
- 休暇の理由がFAMLIの対象となることを確認
- 可能な場合は、休暇開始の30日前までに雇用主に通知
休暇中いくらもらえるかは、直近5四半期の収入の週平均を元に割り出されます。
公式サイトでは週平均収入を元にした支給額の目安を掲載しています(画像のタップで実際のサイトに移行します)
自分の収入を記入しておおまかな受給額を割り出す計算ツールも公式サイトにあるので、気になる方はそちらも見てみてください。
FAMLIとFMLAの違いは?
ちなみに国が提供するFamily Medical Leave Act(FMLA)とコロラド州の提供するFAMILIは別物のプログラムです。
いくつか違いを挙げると以下の通りです。
- FAMILIは有給の、仕事復帰が確約された休暇
- FMLAは無休の、仕事復帰が確約された休暇
- コロラド州で会社に勤めている人のほとんどがFAMILIプログラムの受給対象となる
- 従業員が50名以下のビジネスに勤めている場合はFMLA受給対象外となる
- 現在の仕事を始めて1年経っていない場合、FMLAは受給対象外となる
- 一方FAMILIは新しい仕事でも働き出して1日目からプログラムの受給資格あり
- FAMILIは有給休暇の始まる前180日間雇用されている状態であれば、休暇後の仕事復帰が守られている
- FMLAの場合、仕事復帰が守られるのは12ヶ月中1,250時間以上働いた場合
- 自営業者でもFAMILIプログラムを選択して利用することが可能
その他、FAMILIとFMLAの違いは公式サイトでこちらのようにまとめられています。(画像のタップで公式サイトに移動します)
自営業者でもこのプログラムを受けることはできる?
さて、このプログラムですが、なんと自営業者もプログラムを利用することができます。ただ、自営業でこのプログラムを利用する場合、もし会社勤めの場合、会社と労働者が拠出金を半分ずつ負担していますが、自営業者の場合はこちらを全て自分で負担する必要があります。
自営業者がFAMILIプログラムを受給するため、収入の0.45%を拠出金として最低3年間支払う必要があり、四半期ごとに収支報告、収入証明とそこから割り出される拠出金を支払う必要があるようです。期日に遅れると受け取り不可もしくは罰金が発生する可能性もあるので注意が必要です。
我が家は夫も私も自営業。ただ自営業の方はわかると思うのですが、自分への給料は低く設定していろんなものを経費として落としたりもしてますよね…そして収入が一定期間保証されて有給休暇がもらえるからといって、自営業のお客さんは待ってもくれません。
もし有給休暇中にビジネスが発生してしまった時の場合などどうなるのでしょう?FAQも目を通してみましたがそちらに関しては記載がありませんでした。
いかがだったでしょうか?
実際内容が盛りだくさんなのでとても長くなってしまいましたが、この記事を書く中でいかにFAMILIが素晴らしいプログラムか、そしてコロラドで出産子育てをする人、家族をサポートする人にとって有益なプログラムかがわかりました。
気になる方はぜひ公式ホームページを覗いてみてくださいね。